こんにちは。
前回(https://www.miyashima-dental.com/content/59/)は「歯周病菌とその予防とは?」という記事で、お口の中の細菌と歯周病菌の関係をご説明しました。
今回はその中でたくさん出てきました歯周病菌の一種である「P.G菌」について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
P.G菌とは、Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)菌の略称です。
前回も触れましたが、数ある歯周病菌のなかで特に病原性が高い3種類の菌をRed complex(レッドコンプレックス)と呼んでいます。
その3種類の菌の中でも特に気をつけたいのがP.G菌です。
P.G菌は酸素に触れたり、Ph6.5以下の酸性環境では生きていけません。自分たちの住みやすい環境にするため、歯肉の防御機構を破壊して深い歯周ポケットを形成し酸素の届かない環境を作るための様々な武器を持っています。
また、P.G菌の栄養はタンパク質と鉄分です。血液中の鉄を得るために歯肉から出血を促します。歯磨きや歯周病の検査で出血する場所はP.G菌の住みやすい環境です。
P.G菌は他の歯周病菌よりも強力な武器を持っています。
特に強力なのが「線毛」と「ジンジパイン」と呼ばれるものです。
線毛は、細菌の周りに生えている細い毛のことで手足のように使います。それにより細菌同士で手を組みデンタルプラークと言われるバイオフィルムを作ります。バイオフィルムの中は酸素が少なく唾液の抗菌作用や内服の抗菌薬が届きにくい場所で細菌が住みやすい環境です。
また、線毛によりPG菌は自ら動いて歯肉の細胞内に侵入します。
ジンジパインは、PG菌の持っているたんぱく質分解酵素です。線毛によって歯肉の細胞内に侵入したPG菌は、ジンジパインによって様々な悪影響を起こします。
・コラーゲンなどの正常な歯周組織を破壊して、歯周ポケットを深くしたり歯肉退縮を起こします。
・止血に関わるたんぱく質を分解して、出血を促しPG菌の食べ物であるタンパク質と鉄を手に入れます。
・炎症を活発化させ、体が細菌と戦う免疫成分を分解して歯を支えている骨を溶かします。
このようにPG菌は、単体ではお口の中に住み着くのは苦手な菌ですが、デンタルプラークや深い歯周ポケットの中で菌数を増やします。
歯周ポケットの中にPG菌などの悪い菌がどれだけたくさんいるかでその方の潜在的な歯周病リスクを測ることができます。
令和6年4月に東海市加木屋町に開院するみやしまデンタルクリニックでは、保険診療外の自由診療になりますが歯周ポケットの中にPG菌や他の歯周病菌がどれだけいるのかを調べる歯周病細菌検査を導入予定です。
ご自身の歯周病リスクを詳しく調べることで、日々のブラッシングや定期的な歯科医院でのメインテナンスのモチベーションにしていただいている方もいらっしゃいます。
今回は歯周病とは切っても切れない関係のPG菌について少し詳しい内容でしたが、記事にしてみました。
次回は歯周病の検査の種類について解説したいと思います。
歯科医院に行くとなんとなく受けている検査ですが、どんな種類があり何を目的に行っているのかをご理解していただけると思います。
どうぞよろしくお願いします。
参考文献
天野敦雄(2020)歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト クインテッセンス出版株式会社